何を見て買ったか(2026 年 3 月 23 日)

3 月 22 日の日曜、先物が大きく下げていた。
月曜の朝に 5 銘柄を買うと決めて、その 1 つがカンロだった。

買う前に見ていた一覧表には、こう出ていた。

📋 一覧表に出ていた数字
・1 株配当:58 円
・株価:1,255 円
・配当利回り:4.62%

当時の買う基準は「利回り 4.0% 以上」。
食品の会社でこの利回りは珍しい。
有価証券報告書を読むと、配当に「93 円」という下限を設けていることも分かった。
5 銘柄のなかで、いちばん自信があった。
いい銘柄を見つけた、と上機嫌だった。

1,190 円で 15 株。
買った直後の記録に、私はこう書いている。

「取得利回り 4.87%。取得単価割れ・利回り 5% に上昇・買増好機」

下がったらもっと買うつもりでいた。

翌日、数字が合わないことに気づいた

じつは、買う前から小さな違和感はあった。
証券口座の配当利回りのランキングに、カンロという銘柄があったかなぁ、と。
利回りが 4.6% もあるなら、名前を見かけていてもいいはずだ。
少しざわっとしたのに、気のせいだろうと、そのまま買ってしまった。

3 月 24 日、手元の決算データを見直していて、カンロだけ年度が古いことに気づいた。
調べると、カンロは 2025 年 7 月 1 日に、1 株を 3 株にする株式分割をしていた。
まさか、そんなはずは、と目を疑った。

一覧表の「58 円」は、分割する前の 2023 年 12 月期の配当だった。
それを、分割したあとの株価で割っていた。

項目見ていた数字実際
1 株配当58 円(2023 年 12 月期・分割前)33 円(2026 年 12 月期の会社予想・分割後)
買った値段1,190 円1,190 円
取得ベースの利回り4.87%2.77%
配当の下限93 円(分割前)31 円(分割後に換算)

58 円をそのまま 3 で割ると 19 円。
そのあと配当が増えていたので、実際の予想は 33 円になる。
どちらにしても、買う基準の 4.0% には届いていなかった。

配当が減ったわけではない。
分割をそろえて並べると、31 円、32 円、33 円(予想)と毎年増えている。
会社は言ったとおりに配当を出していて、読み違えたのは私のほうだった。

配当は減っていなかった(1 株配当・分割をそろえた数字)

2040600表に出ていた 58 円(分割する前の数字)19 円2023 年12 月期31 円2024 年12 月期32 円2025 年12 月期33 円2026 年12 月期(予想)下限 31 円

2025 年 7 月の分割(1 株を 3 株に)にそろえた 1 株配当。2026 年は会社の予想。下限 31 円は、分割前の 93 円にあたる。出典:決算短信・有価証券報告書

その日のうちに、買い増しはやめると決めた。
利回りが 4.0% になる 825 円まで下がるのを待つ。
「下がったら買い増す」と書いた翌日のことだ。

やってしまった、とは思った。
ただ、新しいことを始めると、私はたいてい 2、3 回は失敗する。
その 1 回がこれか、という受け止めもあった。

15 株、2 万円に届かない金額だったから、まだ笑って済ませられる。
これを 100 株単位でやっていたら、と思うと血の気が引いた。

なぜ気づけなかったのか

1. 配当と株価で、時点が違っていた

一覧表は便利だけれど、それぞれの数字がいつのものかまでは書いていない。
配当は 2 年前の決算、株価は今日。
そのあいだに 1 株を 3 株にする分割があると、割り算の答えは 3 倍になる。
表の数字がいつの決算のものかを、私は確かめていなかった。

配当と株価の「時点」がずれていた

この 2 つで割り算をしていた配当 58 円株価 1,190 円1 株を 3 株に分割2023 年 12 月期2025 年 7 月 1 日2026 年 3 月 23 日分割をまたいで割ると、答えは 3 倍になる

2. 分割があったかを、買う前に調べなかった

カンロは 2019 年、2022 年、2025 年と、6 年のあいだに 3 回分割している。
分割をする会社だということは知っていた。
それなのに、買う前の手順に「分割を調べる」が入っていなかった。

3. 確認を重ねたつもりで、元の数字が同じだった

一覧表の数字で付けた点数、有価証券報告書の読み込み、ほかの会社との横並びの比較。
3 つとも「買ってよい」と出て、それで安心した。
でも 3 つとも、同じ古い配当の数字を元にしていた。
元が同じなら、何回確かめても同じ答えが出る。

確かめ方は 3 つ、元の数字は 1 つだった

分割前の、古い配当の数字一覧表の数字で付けた点数有価証券報告書の読み込みほかの会社との横並びの比較3 つとも「買ってよい」

食品の会社で 4.87% は高すぎないか、と一度立ち止まればよかったとも思う。
高い利回りには理由がある。
このときの理由は「数字が古い」だった。

それでも 4 か月持っていた

気づいたあとも、すぐには売らなかった。
会社の中身は悪くないと思っていたからだ。

5 月には、こう書き残している。

「売ってしまえば、教訓も一緒に手放すことになる気がする」

失敗を忘れないために持っておく、というつもりだった。
そのあいだに株価は下がって、6 月 4 日の終値は 1,047 円。
買った値段より 12% 低かった。

6 月には、点数も付け直した。
事業の良さに引っぱられて、利回りの低さを点数に入れていなかった。
入れ直すと、いまの値段では買う対象にならないことがはっきりした。

7 月、手放すことにした

考えが変わったのは 7 月だった。
娘が 22 歳になるときに受け取りたい配当を考えると、お金は利回り 4% 以上、できれば 4.5% で働かせたい。
いまのままでは、目標に届くかどうか際どいところだった。
そこに、利回り 2.77% の銘柄を抱えている。
4.5% の銘柄に移せば、それだけで毎年 1.7% ずつ違ってくる。

カンロを持ち続ければ、たしかに教訓にはなる。
でも、教訓は記録に残して、買う前の手順で生かせばいい。
お金を遊ばせておくわけにはいかない、と思った。

そこで 7 月 15 日に、決まりを 1 つ作った。
基準に届かないまま持っている銘柄は、値上がりが税金を引いたあとで 4.5% を超えたら、その日に売る。
カンロなら 1,257 円になる。
この日の終値は 1,187 円だった。

2 日後の 7 月 17 日。
日経平均が 2 日で 6% あまり下げるなかで、カンロは逆に上がった。
決まりの 1,257 円を超えていた。

2 週間後には、決算の発表を控えていた。
中身が分からないまま待つより、今しかないと思った。
決算のあとで上がったら、「売ったら上がる」の法則だな、と苦笑いすればいい。
それでも利益を残せたことを喜ぼう。
下がったら、完全なラッキーだったと思うことにしよう。
そう決めて、15 株すべてを 1,267 円で売った。
単元未満株は成行でしか売れないので、「もう少し待てば」と粘る余地もなかった。

項目数字
買った値段(3 月 23 日)1,190 円
売った値段(7 月 17 日)1,267 円
値上がり+6.5%
6 月の中間配当を入れて、税金を引いたあと+6.2%
カンロの株価の推移。2025 年 7 月の株式分割のあとから 2026 年 10 月 7 日までの終値に、買った値段 1,190 円の線と、買った日(3 月 23 日)・売った日(7 月 17 日)を重ねた図

カンロの株価(終値)。
点線は買った値段。
買ったときには、もう高値から半分ほどに下がっていた。

売れたと分かって、正直ほっとした。

うまくいったのは、完全に運だ。
ビギナーズラックと言っていい。

あの日、カンロ自身に上がる材料は、探しても見つからなかった。
下げを引っぱったのは、AI や半導体の銘柄だった。
そこから逃げたお金の行き先の 1 つが、景気に左右されにくい食品だったのだと思う。
カンロには、わずかに追い風が吹いていた。
そのタイミングに、たまたま居合わせただけだ。

売ったあとのこと

売った 2 週間後の 7 月 31 日、カンロは今期(2026 年 12 月期)の利益の予想を下げた。
営業利益は 49 億円から 42 億円へ。
前の期より 10% 少ない。
配当の予想 33 円は変えていない。

株価はそのあと下がって、10 月 7 日の終値は 1,039 円。
これを見通して売ったわけではない。
売る日に決めていたとおり、完全なラッキーだったと思うことにしている。

いま、買う前に確かめていること

この件のあと、買う前の手順を 3 つ足した。

1. 数字が「いつの決算のものか」を見る

配当と株価の時点がそろっているかを確かめる。
配当は一覧表の数字を使わず、会社が出している最新の予想を決算短信で見る。

2. 株式分割の履歴を調べる

過去の分割の年月と比率を、買う前に必ず調べる。
分割があれば、配当を今の株数にそろえてから比べる。

3. 利回りを自分で計算する

🎯 取得ベースの利回り
会社予想の年間配当(分割後)÷ 買う値段 × 100

カンロなら 33 ÷ 1,190 で 2.77%。
買う前にこの 1 行を計算していれば、止まれたはずだ。

もう 1 つ。
同じ業種の会社と比べて利回りが高すぎるときは、先に数字のほうを疑うことにしている。

この記録を残しておく理由

このブログは、娘に渡すつもりで書いている。
19 年も続ければ、うまくいかないことは何度もある。
うまくいった話だけを残すと、あとで読む娘が同じところでつまずくかもしれない。

カンロは、間違えて買って、たまたま少しのプラスで終わった。
次も同じように終わるとは思っていない。
だから、間違えた手順のほうを残しておく。