なぜ「独自の基準」が必要なのか

高配当株を始めたとき、最初は SBI 証券や楽天証券の「高配当株ランキング」を見ていた。配当利回りが高い順に並んでいるリスト。確かに見やすい。でも、そのリストで上位に来る銘柄を 5 つ調べてみて、すぐに違和感に気づいた。

利回り 6% の銘柄が、過去 10 年で 3 回減配していた。利回り 5% の銘柄が、来期に減配を予告していた。利回りという「結果」だけを並べたランキングには、「なぜその利回りなのか」「来年も同じ配当が出るのか」 という肝心の情報が抜けている。

🎯 気づき:高配当株は「結果(利回り)」ではなく「原因(事業の質・財務・配当方針)」で選ぶべきだ。

そこで、自分なりの判断軸を作った。それが「3 軸スコアリング」と「定量・定性の二重採点」という仕組み。完璧ではないけれど、人気投票より自分の判断を信じるための補助線として機能している。

3 軸スコアリング — 100 点満点で何を見るか

高さの異なる3本の木製の柱が並ぶフラットイラスト。左からコイン・葉・宝箱のアイコンが乗り、3軸の重みづけを表現

銘柄を 100 点満点で採点する。配点は次の通り。

配点採点項目
軸1:配当の魅力40 点配当利回り・連続増配年数・増配 CAGR・配当方針の質
軸2:配当の継続性35 点過去危機での配当維持実績・営業 CF の安定性・特定顧客依存
軸3:財務の安全性25 点自己資本比率・有利子負債・営業利益率トレンド

軸1(40 点):配当の魅力

4.5% 以上 30 点 最高評価
4.0% 台 26 点 本線・買い候補
3.5% 台 21 点 分散補強のみ
3.0% 未満 0〜15 点 原則対象外

配当利回りは「現在株価ベース」で測る。本線は 4.0% 以上——これがほのたね。の買い候補ラインだ。3.5% 台も残しているのは、後述のセクター分散の文脈で例外的に組み入れることがあるから。「利回り 0.5% より、ポートフォリオ全体の安定性のほうが娘の 19 年に効く」と思っている。

連続増配年数— 株式分割を遡及換算した実質ベースで評価。10 年以上で高評価。中断・減配があれば減点
配当方針の質— 累進配当(下限明文化)> 安定配当 > 業績連動(下限なし)の順に高評価。「累進配当」の明文化は、株主との約束を強化したことを意味する

軸2(35 点):配当の継続性

危機時の配当維持(リーマン・震災・コロナ)— 維持・増配で高評価。減配は減点。これを最重視する
営業 CF の安定性— 直近 5〜7 期で赤字ゼロが高評価。複数回赤字は減点
業種特性— ディフェンシブ(食品・公共インフラ等)は加点。景気敏感(建機・人材派遣等)は継続性の観点で要注意

軸3(25 点):財務の安全性

自己資本比率— 60% 以上で高評価 / 40% 未満は減点
有利子負債— 実質無借金(ネット D/E がマイナス)が満点。高負債は減点
営業利益率トレンド(5 期)— 上昇傾向なら加点。低下傾向なら減点

定量指標と定性指標の二重採点 — なぜ 2 つ必要なのか

左手が万年筆でノートに記録し、右側にラップトップのダッシュボードが並ぶフラットイラスト。人間の定性評価と自動算出が対等に並走する様子

採点を 2 系統で行うのが、ほのたね。の流儀。数式で算出する 定量指標 と、有報精読による 定性指標 を組み合わせることで、どちらか一方では見えない「乖離」を浮かび上がらせる。

採点種別強み弱み
定量スコア数式による自動算出客観・再現性・横比較が容易定性要素(ブランド・経営姿勢)が反映されない
定性スコア(ほのたね。採点)有報精読による主観評価事業の質・経営の誠実さを反映できる主観に依存・横比較が難しい

2 つを併用することで、単独では見えない「乖離」が浮かび上がる。

定性>定量 の場合 — 「数字より物語が先行する」

定量スコアが低いのに定性スコアが高い銘柄は、数字には現れない強み を持っている可能性がある。例えば EJ ホールディングス(2153)は定量 71 / 定性 93 で乖離 +22。有報を丁寧に読んでいくと、リーマン後の構造改革・国土強靭化への政策連動・累進配当の明文化など、数字の改善より先に「会社の姿勢の進化」が起きていることが見えてくる。

こういう銘柄は 「先行投資としての保有」 に値する。逆に定量が高すぎて定性が低い銘柄は警戒する。「数字が良すぎる時、何かを見落としている」可能性があるから。

定量≒定性 の場合 — 「数字と物語が一致している」

両者がほぼ同じ点数の銘柄は、安心して保有できる。アイティフォー(4743・定量 89 / 定性 89)はその好例。地方銀行向けシステムという地味だが堅牢な事業に、累進配当・実質無借金・連続増配 7 年という数字がしっかり付いている。

ゾーン判定 — 買うか、待つか

最終スコアは 「定量 × 0.4 + 定性 × 0.6」 で算出する。定性を 6 割重視するのは、有報精読という「時間と労力をかけた判断」のほうが数字より重みがあると考えるから。

ただし、ゾーンは スコアと「現在の利回り」の両方を見て 決める。スコアだけで買えないし、利回りだけでも買えない。両輪での判定。

ゾーン条件判断
★ 購入スコア 65 点以上 + 利回り 4.0% 以上本線。買い候補
◎ 検討スコア 50 点以上 + 利回り 3.5% 以上下落待ち・セクター分散の文脈で買増
△ 待機利回り 3.0% 未満保有継続のみ・新規購入なし

注意:スコアだけで決めない。利回り・株価・ポートフォリオのセクター分散も同時に見る。スコアは「無視してはいけない情報」を漏らさないためのチェックリスト。

セクター分散 — 「ポートフォリオ全体」で見る

ほのたね。のポートフォリオは、1 銘柄の利回りが 0.5 ポイント下がる(4.0% → 3.5%) より 全体としての安定性 を優先する設計にしてる。だから時々、本線(4.0%)に届かない 3.5% 台の銘柄も買う。理由は一つで、セクター分散の補強

「1 銘柄の利回り 0.5 ポイント」より「全体の安定性」と言える根拠は、感覚だけじゃない。銘柄数を増やすほど非系統的リスクは減衰し、30 銘柄前後で大半が消えるという、モダンポートフォリオ理論の古典的な結論がある。ほのたね。が目指してるのは、まず 30 銘柄を早めに、ゆくゆくは 50〜70 銘柄に広げていくこと。それを管理しやすい粒度として 7 区分に整理してる。

2026 年 5 月時点で、保有 12 銘柄をセクター別に並べるとこんな感じ。

セクター目標銘柄数現状過不足
サービス104(ディップ・学情・WDB HD・OAG)−6
情報通信102(プラネット・アイティフォー)−8(最優先で強化)
機械・製造73(コマツ・アマノ・未来工業)−4
食品72(JT・カンロ)−5(JT 依存を分散)
金融・保険60−6(フェーズ 2 以降)
建設・不動産51(EJ HD)−4(強化中)
消費・小売30−3(NTT・KDDI・高配当王道銘柄などフェーズ 2 以降)

この表があるから、利回りが 3.5〜4.0% の銘柄でも、過不足の大きいセクター に該当すれば「組入れる価値あり」と判断できる。実例を 3 つ。

例外組入の実例:3 銘柄

銘柄取得利回りセクター組入理由
プラネット(2391)3.51%情報通信最優先強化セクター(目標 10・現状 2)。BtoB プラットフォームの寡占性と 11 期連続増配の質が評価軸を支えた
コマツ(6301)3.79%機械世界建機 No.2 の規模優位。景気敏感の弱点を、機械セクター内の他銘柄(アマノ・未来工業)と組み合わせることで吸収
E・J HD(2153)3.86%建設・不動産建設セクター唯一の組入。国土強靭化政策との連動性・累進配当の明文化が支え

3 銘柄とも本線(4.0%)には届かない。それでも買った。理由を一文にすれば 「セクターを揃えるほうが、ポートフォリオの 19 年に効く」 ということ。

逆に言えば、本線に届かない銘柄を買う条件は 「セクター分散の文脈で説明がつくこと」 に限定してる。なんとなく利回りに目をつぶることはしない。説明できない 3.5% は、ただの妥協になるから。

ガチホ適格チェック — 買う前の最後の関門

スコアで合格しても、以下の 5 項目に引っかかれば購入は見送る。

過去 5〜7 期で営業 CF 赤字がある— 配当の原資が不安定。減配リスクの根幹
特定顧客への依存度が 35% 超— 顧客喪失で業績が一変するリスク
過去のコロナ・震災で 50% 超の減配履歴— 業績連動型の証拠。ガチホには向かない
配当性向が継続的に 80% 超— 利益のほぼすべてを還元しており、業績悪化時のバッファがない
のれんが総資産の 30% 超— M&A 失敗時の減損リスクが大きい

このチェックは「除外チェック」であって、「合格=買い」ではない。あくまで 「買ってはいけない銘柄を弾く」 のが目的。

有報精読の実際

定性スコアの根拠となる「有報精読」は、独自に設定した 10 の設問に沿って有価証券報告書を読み込み、各設問への回答を積み上げていく作業だ。配当・収益性・財務健全性・減配シナリオから、業種固有の構造、ガバナンスや資本配分まで、1 銘柄あたり 2〜3 時間をかけて精読する。

この作業を 娘の名前で 19 年かけて記録する のがほのたね。の本質。一発当てる投資ではなく、長期にわたって 「父の判断の歴史」 を残す。それが配当そのものより、ずっと価値があると思っている。

この基準で選んだ 12 銘柄

2026 年 5 月時点のポートフォリオは、この基準で絞り込んだ結果。各銘柄の詳細記事は順次公開予定で、リンクのある銘柄は個別記事でスコアの根拠を確認できる。

銘柄セクター定量定性最終ゾーン
ディップ(2379)サービス719283.6★購入
学情(2301)サービス688578.2★購入
未来工業(7931)精密・製造629078.8★購入
EJ ホールディングス(2153)建設コンサル719384.2◎検討
プラネット(2391)情報通信698880.4△待機
オープンアップG(2154)サービス808583.0★購入
アマノ(6436)機械618877.2◎検討
WDB HD(2475)サービス688075.2★購入
カンロ(2216)食品419472.8△待機
JT(2914)食品377962.2△待機
コマツ(6301)機械497262.8△待機
アイティフォー(4743)情報通信898989.0★購入

12 銘柄の最終スコア平均は 76.8 点。★購入が 5 銘柄、◎検討が 3 銘柄、△待機が 4 銘柄。「全部 ★購入で揃える」のではなく、3 つのゾーンが混在している のが意図的。下落トリガーで買増を待つ銘柄、ガチホは続けるが新規購入を停止する銘柄、それぞれにポートフォリオ内での役割がある。

※ ゾーンは現在の株価ベースの利回りで判定する。取得時に ◎検討 で組み入れた銘柄(プラネット・コマツ・EJ HD)も、その後の株価上昇で利回りが 3.0% を下回れば △待機 に移行する。保有継続に問題はないが、追加購入は停止する。

「数字より物語」 — ほのたね。の根本哲学

3 軸スコアリングも定量・定性の二重採点も、結局のところ 「物語」を見つけるための補助線 だ。

ディップが「離職率 19.9% でも累進配当を守った会社」であること。EJ ホールディングスが「リーマン後の 2 期連続無配を経て累進配当に到達した会社」であること。カンロが「のど飴首位 100 年というブランドを持ちながら株式分割で見落とされた会社」であること。こういう物語が、19 年の保有を支える。

数字は嘘をつく。スコアも算出方法を変えれば変わる。でも、有報の中に書かれた経営者の言葉、危機に対する対応、長期戦略の一貫性——これらは時間をかけて読まないと見えない。

娘に渡すのは、配当でも株価でもなく、その「読んだ時間」そのものだと思っている。

次のステップ

この基準を理解した上で、各銘柄の個別記事を読んでほしい。

そして、これらの銘柄を 「いつ買うか」 という話は、別記事「高配当株の買い時を科学する — 勝率 84% の買いタイミング判断法」(近日公開)で詳しく書く。買う基準と買うタイミングは、別々の判断軸として持つべきだから。